狭心症の治療方法とは。服薬治療の薬と、手術方法について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
treatment-of-angina-912x642

狭心症は、健康診断などでみつけるのが難しい病気です。発作が起こったときは心電図に異変がでますが、それ以外の時に心電図をとっても、異変があらわれないからです。そのため、健康診断で問題無いといわれたとしても、狭心症になる可能性がゼロというわけではありません。健康診断などで何も問題がなかった人が、急に陥る可能性もあるのです。10秒~10分程度の胸等の痛みを感じた場合は狭心症の可能性があります。そういった症状がある場合は、すぐに検査を受けることをお勧めします。

ではもしあなたが狭心症になったとしたら、どんな治療をするのでしょうか。

突然の胸の痛みを感じた場合、その後、どんな治療や手術が待ち受けているかとても大きな不安を感じる事と思いますが、当記事で狭心症だった場合の治療について事前に知っておけば、必要以上に不安に陥ることが無いと思います。万が一のときの予備知識として、当記事を活用していただけたらと思います。 

目次

  1. 服薬治療
  2. 手術による治療

1.服薬治療

 狭心症の基本的な治療方法は、薬を飲むことです。血液をさらさらにするものや、血管を拡張するもの、心臓の負担を軽くするものなど様々なタイプがあり、状況に応じて、服用する事になります。

症状が症状なので、この薬の使用は長期に及ぶことが多いです。効果がある薬にはその分副作用もあるので、それをしっかり理解して正しく使用して下さい。

 

1-1.血液をさらさらにする薬

血液を固める性質のある血小板の作用を弱めて、血栓ができるのを防ぐ薬です。抗血小板薬とも言われます。

アスピリン

アスピリンは、熱を下げたり痛みを止めたりするのに使う薬ですが、その用途の3分の1程の量で使うと血液をさらさらにする効果があります。服用してから1時間ほどで効果がでてきます。狭心症や心筋梗塞患者の必須薬のような位置づけになっており、狭心症になった場合、多くの人が使用する事になる薬です。

アスピリンには、胃で吸収されるタイプと腸から吸収されるタイプがあり、胃炎や胃潰瘍などがある場合は腸から吸収するタイプを使用します。

・副作用

副作用としては、胃腸障害や気管支喘息などがありますが、血液をさらさらにする目的で使用する場合は量が少ないこともあり、安全性の高い薬です。

 

塩酸チクロピジン

 塩酸チクロピジンもアスピリンと同じように、血小板に作用して血液をさらさらにします。アスピリンよりも作用が強力ですが、服用してから効果が出るまでに1~2日かかります。

後の手術の項で説明する、「ステント」を入れた人が服用することの多い薬です。

・副作用

 肝臓の機能障害を起こす可能性があります。この症状は服用してから2ヶ月以内に生じることが殆どですので、その期間を過ぎて何も無ければ、その後も問題なく使用できます。

 

シロスタゾール

これも血小板に作用して血液をさらさらにする薬です。効果の強さとしては、アスピリンと塩酸チクロピジンの中間程です。服用して数時間で効果があらわれるため、塩酸チクロピジンの効果があらわれるまでのつなぎ役として3日ほど服用する事があります。

この薬は、血液をさらさらにするのに加え、末梢血管を拡張する作用もあります。

・副作用

副作用としては、動悸です。症状がひどい場合にはこの薬は使用しないほうがいいです。 

 

ワーファリン

 この薬は抗凝固薬といわれています。血液を固まりにくくし、血栓ができるのを予防します。血漿(けっしょう)が固まる時に関わっているビタミンKの作用を抑え、血栓が作られるのを防ぐ薬です。

効果が強い薬なので、使用には注意が必要です。狭心症のコントロールが上手くいかず、心筋梗塞をおこしやすい状態になっているときに使われます。

効き目の個人差が大きく、効果が現れるのも遅いので、血液凝固の程度を調べる検査を毎日行いながら、服用量を決めます。医師の指示にしっかりと従って服用することが必要な薬です。その後も定期的に血液凝固検査を行う必要があります。

納豆やクロレラ、青汁などはワーファリンの効果を弱めるので食べないようにする必要があります。 

・副作用

出血をすると、血がとまらずひどくなる場合があるので、出血する可能性のある事を控える必要があります。例えば歯ブラシも柔らかいものを使用し、鼻をかむのも注意をする必要があります。仕事や運動でも、怪我をする可能性があるものは控えるようにする必要があります。

 

1-2.冠動脈を広げる薬

ニトログリセリン

ニトログリセリンは即効性があり、狭心症の発作があった時に使用すると発作を抑える作用があります。投与の仕方は舌の下にニトログリセリン錠を置くか、またはスプレーを舌の下に吹きかける方法があります。3分程で効果があらわれ、20分程で効き目がなくなります。発作を感じたらすぐに使用する薬です。

薬のタイプ

錠剤タイプのものと、スプレータイプのものがあります。舌の下にある太い血管から吸収されるため、錠剤は舌の下に入れて溶かし、スプレーは舌の下に噴霧します。

効果の出る仕組み

ニトログリセリンは、舌の裏側の粘膜から吸収されて血管に入り、心臓に直接作用して冠動脈を広げます。一時的に冠動脈が広がるので、心筋に血液が流れるようになり、症状が治まります。

注意点

ニトログリセリンは発作を抑える目的で使用される薬です。頻繁に使っていると、効果が次第に薄れてしまい、効かなくなります。狭心症の治療を、ニトログリセリンで続けることはできません。

また、ニトログリセリンには有効期限があります。通常開封しなければ5年間は持ちますが、期限が切れてしまうと全く効果を発揮しません。使用期限には十分に注意してください。

副作用

 ニトログリセリンには頭痛やめまいなどの副作用があります。ニトログリセリンは冠動脈を広げて発作を抑える薬ですが、冠動脈だけでなく、頭など他の部分の血管も広げます。この時頭痛が生じる場合があります。また血管が広がると血管の抵抗が小さくなるので血圧が下がったり、めまい、動悸などを起こすことがあります。

ニトログリセリンを使用した時は、このような副作用の事を考え、座って安静にしているのが安全です。

 

硝酸イソソルビド

 硝酸イソソルビドは、持続性のある薬です。狭心症や心筋梗塞が慢性化している場合に使用します。ニトログリセリンと同じく、冠動脈を広げる作用があります。こちらは即効性が無い分、効果が長く続きます。

薬のタイプ

錠剤タイプのものと、テープになっていて、体に貼り付けるものがあります。錠剤は1日に2錠、朝と夜に服用します。テープ式のものは1日に1枚を体に貼ります。体のどの部分にはっても吸収されるので、心臓の上にはる必要はありません。

 注意点

硝酸イソソルビドは血管を広げ血圧を下げます。服用してから安定するまでは、血圧に注意する必要があります。お酒を飲んだときに血圧が下がる場合もあります。

副作用

硝酸イソソルビドの副作用として多いのは頭痛です。ただし時間とともに、体が慣れて痛まなくなる事が多いようです。その他に、発疹、かゆみ、立ちくらみ、動悸、むくみ、腹痛などの症状が出る場合があります。

 

1-3.心臓の負担を軽くする薬

β(ベータ)遮断薬

 β(ベータ)遮断薬は、心拍を遅くしたり、心臓のポンプの力を落として、心臓の運動量を落とす薬です。体を動かして起こる血圧の上昇や脈拍の増加を抑えられるので、心臓の酸素消費量を抑えられます。このため運動によって起こる狭心症の発作を防ぐ効果があります。

作用の仕組み

交感神経にはたらきかけて、心筋の興奮を抑えます。そのため少ない酸素で心臓が動くようになり、心臓の負担が軽減されます。

適応外の状況

運動による狭心症を防ぐ意味合いが強いので、安静時におこる狭心症には普通は使われません。また、この薬は心臓のポンプの能力を抑えてしまうので、心不全などでポンプの力が既に弱い人には使用できない事があります。

使用上の注意点

血圧を低下させ、脈拍を遅くする作用があります。服用を開始してから安定するまでは、血圧や脈拍を注意深く観察する必要があります。動悸や失神発作に注意します。

副作用

 β(ベータ)遮断薬は、気管支を収縮させる作用があります。そのため気管支喘息の発作につながることがあります。

 

1-4.冠動脈の痙攣を防ぐ薬

Ca(カルシウム)拮抗薬

Ca(カルシウム)拮抗薬は、血管の収縮を引き起こすカルシウムの働きを抑える薬です。冠動脈の痙攣によって血管が縮まり狭心症発作が起こる冠攣縮狭心症の予防に有効です。血圧を下げる作用もあります。

使用上の注意点

この薬も血圧を下げる作用があるので、それによって起こるふらつきや、皮膚の発疹、かゆみ、動悸、むくみ、頭痛などが起こる可能性があります。

副作用

便秘になる場合があります。また顔がほてった感じがする場合があります。

 

2.手術による治療

薬物療法だけでは不十分な場合、手術によって治療する事になります。まずは心臓カテーテルを使って、狭くなった冠動脈を広げることを検討しますが、それが難しい場所の場合や、その手術で危険が伴う場合は、バイパス手術を行います。

手術というと成功率が気になりますが、非常に成功率の高い手術です。

 

2-1.カテーテルによる手術

冠動脈が75%以上狭くなっている場合、血管にカテーテル(細い管です)を通して狭くなったところをもとのように広げる治療を行います。これは、PTCA(経皮的冠動脈形成術)と呼ばれています。バルーンを使い、血管を広げるので、風船療法といったりもします。心臓にメスを入れる必要の無い成功率の高い手術で、成功率は90%以上といわれています。

バルーン(小さな風船)で血管を広げるだけの方法と、バルーンで広げた冠動脈にステントという金属でできた網の筒を入れて血管を補強する方法があります。ステントを使用しないと、手術が終わったあとにまた詰まってしまうことがあるので、ステントを用いた治療が一般的です。

カテーテルは、局所麻酔をした後、足の付け根やひじの動脈などから挿入します。

 

バルーン治療

mechanism-of-the-balloon-treatment

バルーン治療は名前の通り、バルーン(小さな風船)で狭くなった血管を広げる方法です。冠動脈に造影剤を入れて冠動脈をみながら(冠動脈造影検査の方法です)、先端に小さなバルーンのついたカテーテルを、冠動脈の狭くなったり詰まったりしているところまで入れます。

狭くなった場所でバルーンをふくらませて血管を内側から広げます。広がったところでバルーンをしぼませ、カテーテルを冠動脈から引き抜きます。

 

注意点

広げた冠動脈が6ヶ月以内にもとのように狭くなってしまう、再狭窄の割合が高く、30%程が再狭窄におちいります。この場合、もう一度治療する必要があります。

治療時間

冠動脈造影検査とあわせて1~2時間ほどです。

 

心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)とは

冠動脈はそのままではレントゲンに写らないので、冠動脈の状況を知るためには造影剤を注入する必要があります。カテーテルとよばれる1.5ミリから2ミリほどの細い管を手首やひじ、足の付け根の動脈から体の中にいれ、少しずつ伸ばして心臓まで送り込み、冠動脈の入り口にカテーテルの先端をあわせて造影剤を注入しながら、レントゲン写真を撮影します。

 

ステント治療

sechanism-of-stent-treatment

ステントは、ステンレスやコバルトなどでできた金属性の網状のパイプです。内側からバルーンで膨らませると、筒状に広がり、血管の壁にはりついて、血管を内側から補強します。 ステントが支えになるため、再狭窄が起こりにくくなります。この方法の場合、再狭窄の割合は15%ほどに下がります。

 

 

注意点

 血管の中に金属の筒が入るので、筒の内側に血管内膜が張るまでの約1ヶ月は、塩酸チクロピジンやシロスタゾールなど、血液をさらさらにする薬の服用が必要です。血管内に露出している状態のステントに血栓がくっついて血管が詰まる、急性冠閉塞という症状を防ぐ事がこれらの薬の目的です。

これらの抗血小板薬を飲んでいる間は血液が固まりづらいので、抜歯などは避ける必要がありますし、怪我をしないように配慮する必要があります。もちろん、別の手術を受けることもできません。

治療時間

冠動脈造影検査とあわせて1~2時間ほどです。

 

薬剤溶出ステント治療

薬剤溶出ステントとは、再狭窄を防ぐための薬を塗ったステントです。まわりにシロリムスという免疫抑制剤が塗られていて、このステントから徐々に薬剤が溶け出し、再狭窄を防ぎます。このステントを使用した場合は、6ヶ月以内の再狭窄の割合が5%程度です。

注意点

このステントを使う場合も、抗血小板薬の服用が必要です。ただしこの薬剤溶出ステントの場合は、再狭窄を防ぐ薬が邪魔をして、血管内膜が張るのに数ヶ月かかります。この状態では、急性冠閉塞が起こる可能性があるので、血管内膜が張るまで3~6ヶ月間、抗血小板薬を服用する必要があります。

この間は抜歯や手術が受けられません。また出血しないように注意して生活する必要があります。

 

2-2.バイパス手術

カテーテルによる治療が難しい場合や、危険が伴うと判断された場合バイパス手術を行います。こちらは、全身麻酔を行って、メスを使って胸を開き、冠動脈の治療をする方法です。「冠動脈バイパス手術」という名前で、成功率は95%以上といわれる非常に成功率の高い手術です。高齢者や手術に耐えられる体力が無い場合は、手術できない事があります。

 

手術の内容

バイパス手術という名前の通り、冠動脈にバイパスを作ります。狭くなった冠動脈はそのままに、そこをまたぐようにバイパスをつくり、バイパスを通じて血液がスムーズに流れるようにします。

このバイパスに使う血管は、患者の体の別の部分から取ります。足の静脈か、胸、腕、胃等の動脈を使います。詰まった範囲によって必要とされるバイパス用の血管の量が決まります。

 

手術の時間と回復

手術時間は4時間~5時間ほどです。また手術後、2~3週間は入院が必要ですが、退院後は回復に時間はさほどかからず、通常の生活に戻ることができます。

 

術後のカテーテル検査

心臓バイパス手術を行った場合、手術が終わったら安心、というわけではありません。つないだ血管を確認するために、1ヵ月後、1年後、5年後、10年後など、定期的にカテーテル検査を行う事が推奨されています。退院後の生活習慣がその後の経過に影響を与えるので、そういった生活習慣を見直す意味でも、定期的な検査は効果があるといえます。

 

 まとめ

 狭心症の治療方法をまとめてきました。服薬治療で完結する場合もあれば、カテーテル手術など手術が必要な場合もありますが、成功率は非常に高いです。もし心筋梗塞になって心臓の細胞が壊死してしまうと再生せず、一部が壊死して能力が低くなった心臓とともに生きていくことになります。そうなる前に、狭心症の段階で対処する事が重要です。当記事が狭心症の可能性のある人が病院で検査を受けるきっかけになれば幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*