【公表】JRC蘇生ガイドライン2015。変更点など6つのポイントまとめ

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jrc-guideline2015

平成27年10月16日に新しいガイドラインとして、JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版が公表されました。

このガイドラインは心肺蘇生法の大本で、消防署や赤十字が行う心肺蘇生法やAEDの救命講習の内容はこのガイドラインに従って作成されます。このガイドラインは5年毎に更新されており、2005年版、2010年版に続いて、2015年版が先日発表されました。

一般市民に重要だと思われる変更や重要点をまとめています。
ガイドラインは600ページにも及び専門用語が多く、内容を理解するのには骨がおれます。そこで当記事では、一般の方が要点を簡単に抑えられるように、ガイドライン2010からの変更点やガイドライン2015の重要点など、重要なポイントを抽出しまとめました。

修正が入る可能性があります。
当記事で内容をまとめているのはオンライン版の内容です。引用文献が付記した完全版は2016年2月医学書院から発刊予定ですが、完全版になる際に表記や表現に修正が入る可能性があります。

参照:日本蘇生協議会http://jrc.umin.ac.jp/

目次

  1. 胸骨圧迫は5cm~6cmの深さ
  2. 1分間のリズムは100回~120回
  3. 胸骨圧迫では、胸をしっかりと元の位置に戻す
  4. 胸骨圧迫の中断を最小限に
  5. 呼吸の確認に迷ったら、すぐに胸骨圧迫
  6. 119番通報で指示を仰ぐ

JRC蘇生ガイドラインとは

国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が作成した心臓救急に関する国際コンセンサス(CoSTR)をベースに、各国・各地域がその地域事情にマッチした救急、蘇生のガイドラインを策定しています。

この国際コンセンサスをベースに、日本蘇生協議会(JRC)が作成したガイドラインがJRC蘇生ガイドラインです。

各国の心肺蘇生協議会がそれぞれにガイドラインを作成しており、アメリカ心臓協会(AHA)が作成したガイドラインはAHAガイドライン、ヨーロッパ蘇生協議会(ERC)のガイドラインはERCガイドラインと呼ばれています。

ガイドラインは、5年毎に更新されており、この度JRC蘇生ガイドライン2015が公表されました。AEDの電源を入れると流れる音声ガイダンスは、このガイドラインを基に各メーカーが作成しています。

JRCガイドラインについてや、世界のガイドラインについては下記記事をご参照下さい。

>参考記事:【図で紹介】JRCガイドラインの基礎知識。世界の蘇生委員会との関係など。

1.胸骨圧迫は5cm~6cmの深さ

JRC ガイドライン 2010では胸骨圧迫(心臓マッサージ)で胸を押す深さは5cm以上となっていましたが、新しいガイドライン、JRC ガイドライン 2015では、『胸が約 5cm沈むように圧迫するが、6cmを超えないようにする』となりました。

これまでは胸骨圧迫の深さの限界が指定されていなかったので、深ければ深いほど良いと勘違いしてしまう可能性もあったかと思います。5cm~6cmを正確に判断する事は難しいという意見もでそうですが、適切な深さの範囲が明確にされました。

  • 変更前(ガイドライン2010):5cm以上
  • 変更後(ガイドライン2015):5cm以上で6cmを超えない

2.1分間のリズムは100回~120回

今回のガイドラインでは、胸骨圧迫の重要性がより高まりました。そのため圧迫に関する項目で変更点が多く、胸骨圧迫のリズムにも変更がありました。

ガイドライン2010(g2010)では「1分間に100回以上のテンポ」とされていましたが、ガイドライン2015(g2015)では、『100回から120回のテンポ』に変更されました。

胸骨圧迫の回数が多いほど生存率が高くなるとされていますが、適切な圧迫を長時間継続するためには無駄な圧迫を減らす事も重要です。速すぎると疲れるのが早くなり、特に一般人の胸骨圧迫では徐々に圧迫の深さが浅くなる事が分かっています。適切な圧迫を継続するため、120回という上限を設けたものと考えられます。

  • 変更前(ガイドライン2010):100回/分 以上
  • 変更後(ガイドライン2015):100回~120回/分

3.胸骨圧迫では、胸をしっかりと元の位置に戻す

ガイドライン2015では、胸骨圧迫に関して『押したらしっかりと胸を元に戻す』という点が強調されました。

胸骨圧迫で胸を押した後、掛かる圧を解除する事が重要です。解除する際は完全に胸を元の位置に戻すように力を抜きます。

強く押すことばかり意識していると自然と手や腕に力が入ったままになって押しっぱなしになり、胸をポンプできなくなります。圧迫を1回行うたびに胸が元に戻るように注意して胸骨圧迫をする必要があります。

・重要点と注意点:胸骨圧迫を行う度に胸を元の位置に戻し、圧迫と圧迫との間で力を入れたり、もたれかかったりしない。
止まってしまった心臓の代わりに血液を循環させるイメージを持ち、適切な圧迫と圧の解除をして下さい。

4.胸骨圧迫の中断を最小限に

胸骨圧迫の中断についても、『胸骨圧迫を中断する時間を最小限にする』とされ、中断を最小限にする事が重視されています。

考えられる中断としては、胸骨圧迫を交代するタイミングや、人工呼吸、気道確保、AEDの電極パッドを貼る時やAEDの心電図解析時などが考えられます。そういった際の中断を出来るだけ短くできるようにする必要があります。

・重要点と注意点:胸骨圧迫の中断が10秒を超えないようにする
胸骨圧迫を中断している時間を最小限にする事が非常に重要です。AEDの電極パッドを貼る際も胸骨圧迫を継続する事が望ましいので、心肺蘇生はなるべく複数人で助け合って行うようにして下さい。

5.呼吸の確認に迷ったら、すぐに胸骨圧迫

ガイドライン2015では『呼吸の確認に迷ったらすぐに胸骨圧迫をする』という点も重視されています。

心停止した場合に「死戦期呼吸」と呼ばれる、しゃくりあげるような呼吸がみられることがあります。これは正常な息をしていない状態ですが、口元が動いているので呼吸をしていると勘違いしてしまうケースがあります。そのために心停止の判断が遅れる事がないよう、迷った場合はすぐに胸骨圧迫を始めるべきとされています。

・重要点と注意点:呼吸が異常と感じた場合は心停止状態とみなして、ためらわず胸骨圧迫しましょう。
傷病者を発見したら正常な呼吸かどうか、意識があるかの確認をしますが、この時不自然だなと感じたり、心停止かどうか迷った場合にはすぐにCPR(心肺蘇生法)を開始します。

6.119番通報で指示を仰ぐ

救急車を手配するために119番通報をすると、消防の通信指令員(通信指令をする人)から電話口で指示や指導が受けられます。

携帯電話やスマートホンの普及で、昨今は口頭での指示が容易になりました。その為心停止かどうかの判断に迷ったり、胸骨圧迫のやり方などが分からない場合は、『119番通報した際に電話を切らずに指示を仰ぐ』ようにしましょう。今回のガイドラインではこの通信司令員の役割が強調されています。

人が倒れていた場合の最初の流れを下にまとめます。

  1. 周囲の安全を確認してから近づく
  2. 肩(鎖骨の部分)を叩きながら声を掛けて、反応があるかを確認する。
  3. 反応がなければ、大声で助けを呼ぶ
  4. 周囲の人に119番通報とAEDの手配を依頼する。
  5. 心停止の判断に迷った場合は電話口で通信指令員に相談する。
・重要点と注意点:119番通報をして、救急車を手配したら指示を仰ぎましょう。

まとめ

新しい心肺蘇生法のガイドライン「JRC蘇生ガイドライン2015」について、これまでのガイドラインとの変更点や、強調された点についてまとめました。特に、一般市民が救命処置をするに当たって重要だと思われる点をピックアップしてあります。

この他にも大きな変更点が2点ありましたが、医療従事者向けの内容が含まれるため割愛しました。

1点目は、今までのガイドラインには無かったファーストエイド(急な病気やけがをした人を助けるためにとる最初の行動)の項目が新たに第7章として加わった点です。2点目は、GRADEシステムと呼ばれる学術関連や学会で採用されている評価方法を新たに用いた事です。

この2点については、下記のガイドラインを直接ご確認頂けたらと思います。

GRADEシステムについて:http://jrc.umin.ac.jp/pdf/20151016/1_BLS.pdf
ファーストエイドについて:http://jrc.umin.ac.jp/pdf/20151016/7_FA.pdf

実はココも変わっています。
小さな変更ですが、救命の連鎖も変更されています。それは一次救命処置の部分です。2010では、一次救命処置(CPRとAED)となっていましたが、2015では一次救命処置(心肺蘇生とAED)に変更になりました。
一般市民に分かりやすくするために日本語に修正したものと思います。
当記事と併せて『【解説】一次救命処置の手順。心肺蘇生法ガイドライン2015版』の記事をチェックしてみて下さい。
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コメント

  1. はやちゃびん より:

    とてもわかりやすく、世の中の役に立っていますよ。
    皆、求めている情報です。
    素晴らしいです。
    ぼくは警備員で半年に1回、隊員に教育をしていますが、参考にさせて頂きます!
    ああ、わかりやすい。ありがとう。
    これからも期待してますからね!
    お互い、いろいろ、が~んば!
    にゃはは♪

    1. AEDブログ より:

      暖かいメッセージありがとうございます。
      そう言っていただけると大変嬉しく、励みになります。
      隊員様に教育をされているとの事で、そういった方に参考にしていただき大変うれしいです。
      何か気になる事などありましたら、お知らせいただけますと幸いです。
      ありがとうございます!

  2. たてよこ より:

    明日救急法研修をするものです。
    ガイドライン2015が出たので確認するように言われ資料を渡されましたが、微妙な変更点をもとの2010と両方の説明をどうしたものだろうとネット上資料を探したどり着きました。とても参考になりました。理解しやすいです。明日は受講者の力となれるよう頑張ってまいります。

    1. AEDブログ より:

      たてよこさま、コメントありがとうございます。ガイドラインの内容は膨大ですし、変更点のニュアンスも分かりづらい点が多々あり、私自身噛み砕いて理解するのに苦労した記憶があります。
      説明不足や分かりづらい点も多々あるかと思いますが、少しでもお役に立てたのでしたら大変嬉しいです。コメント頂きありがとうございました。
      ご活躍、応援しております!

  3. より:

    脳障がいについても、もっと議論をして欲しいと思います。
    何でもかんでも助ければ良いのでしょうか?
    心停止から3-4分経過すると何らかの脳障がいが発生してしまいます。

    平成27年の消防庁の統計では、一般市民が除細動を行った件数は1103件
    そのうち507件が死亡
    596件がCPC1or2
    88件がCPC3以上

    心停止からの時間経過にデットラインを引いて、中高度の障がいが発生する確率が高い場合には、本人の意思表示があった場合だけ蘇生を行うようにするべきだと思います。(意思表示をマイナンバーや保険証などに記載)
    中高度の障がいの場合、本人及び家族のその後の人生はとてつもなく過酷になります。
    他者が止まりかけた心臓を無理やり動かすのは、ただの偽善であるように思います。
    障がいが残っても命を助けて欲しいと言う意思は本人ないし家族が決めるべきです。

    助けて気持ち良いのは助けた人間だけです。
    偽善にならないよう、もっと議論しルールを決めるべき。

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